「——太。颯太!」

荒い声にハッと顔をあげると、隆司がデスクの前に立っていた。
その険しい表情から、珍しく隆司が怒っているのがわかる。

「昼休憩もとってないし夕食も食べてないだろ。その上こんな時間まで仕事なんて、身体壊すぞ」

こんな時間って、今何時なんだろう。
タスクバーを見て、夜中の1時半だということを知る。

「隆司、こんな時間まで残ってたのか?早く帰れよ。労基法にも引っかかる」
「もうとっくに退勤で打刻してある」
「じゃあなんで帰らないんだ」
「颯太を送るために待ってたんだよ。そうじゃないと、お前夜通し仕事する気だろ」

思わず閉口した。
隆司はわかっているのだ。俺がマンションに帰りたくないことを。
だって、帰ったところで彼女はもういないのだから。