「確かに、最初は罪悪感から有沢を助けようとしたんだと思う。俺は、有沢がすぐに引っ越せる単身用のマンションを確保するように言われてたんだ」
「え、単身用って…」
「婚約者のふりをして一緒に暮らす取引は、颯太が有沢に会ったときに咄嗟に考えて言ったことなんだ。俺が取引について知らされたのはそのあと。正直、ちょっと驚いたよ」
隆司先輩は苦笑いをしながら軽く肩をすくめた。
「なんで颯太はそんなこと…」
うっすらとわかってはいた。
けれど、それは私の自惚れなんじゃないかとも思って、まだ戸惑いは拭えなかった。
それを見透かしているようで、隆司先輩は続ける。
「そもそも婚約をアピールしたいのはパーティーの一回きりなんだから、その日だけ頼めばいい話でしょ。同居する必要なんかない。だけど颯太は、有沢にあんな取引を持ちかけた。なんでだかわかるよね?」
先輩が軽く首を傾げて問う。問いかけなのに、答えがわかっている前提の口ぶりで。
『俺の身勝手でこうなったんだから』
『かいかぶるな。俺はそんなやさしい人間じゃない』
『ただの償いで済んだらよかったのに』
いくつもの言葉が、表情が、矛盾した態度が、考えれば考えるほど私の自惚れでないことを証明している。
涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「…先輩、私、バカです。10年前も今も、気づけないことばかりだった」
「有沢は鋭いから、10年前、颯太は勘付かれないように必死だったと思うよ。再会してからもたくさん葛藤があったと思うし、自分の気持ちが露呈していくのが怖かったと思う」
隆司先輩は軽く身を乗り出し、穏やかなトーンで言う。
「え、単身用って…」
「婚約者のふりをして一緒に暮らす取引は、颯太が有沢に会ったときに咄嗟に考えて言ったことなんだ。俺が取引について知らされたのはそのあと。正直、ちょっと驚いたよ」
隆司先輩は苦笑いをしながら軽く肩をすくめた。
「なんで颯太はそんなこと…」
うっすらとわかってはいた。
けれど、それは私の自惚れなんじゃないかとも思って、まだ戸惑いは拭えなかった。
それを見透かしているようで、隆司先輩は続ける。
「そもそも婚約をアピールしたいのはパーティーの一回きりなんだから、その日だけ頼めばいい話でしょ。同居する必要なんかない。だけど颯太は、有沢にあんな取引を持ちかけた。なんでだかわかるよね?」
先輩が軽く首を傾げて問う。問いかけなのに、答えがわかっている前提の口ぶりで。
『俺の身勝手でこうなったんだから』
『かいかぶるな。俺はそんなやさしい人間じゃない』
『ただの償いで済んだらよかったのに』
いくつもの言葉が、表情が、矛盾した態度が、考えれば考えるほど私の自惚れでないことを証明している。
涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「…先輩、私、バカです。10年前も今も、気づけないことばかりだった」
「有沢は鋭いから、10年前、颯太は勘付かれないように必死だったと思うよ。再会してからもたくさん葛藤があったと思うし、自分の気持ちが露呈していくのが怖かったと思う」
隆司先輩は軽く身を乗り出し、穏やかなトーンで言う。



