元彼専務の十年愛

「前社長は神代の血を引く颯太を会社に入れたいがために、無理やり東京に連れていった。その間は軟禁状態だったみたいだ。引っ越しの準備のために地元に戻ることを許されたのはたった一日。それが…」

隆司先輩がいったん言葉を切る。

「7月30日」

呼吸を忘れた。
颯太が意図してあの日に突然別れを告げたわけじゃなかったのだ。
前社長に運命を決められた颯太は、そうするしかなかったのだ。
じわりと涙が浮かんで、唇を噛んだ。

「颯太はやっぱり罪悪感に苛まれていたんですね。だから婚約者として一緒に暮らすだなんて取引を…」
「有沢が思ってるのとはちょっと違うよ」

隆司先輩が穏やかな口調で遮る。