シーシー

 昼食を終えたニャン吉は、木陰でゴロゴロしながら、つまようじで歯の掃除中。

 今、ご馳走になった西京焼きは、林業を営む吉田さんちの。

 少し開いてた台所の窓から忍び込んで失敬したもの。

 悪いと思いながらも、腹ペコになったら、理性も常識もへったくれもねぇ。

 あ~あ~、満腹、満腹。さて、めしも食ったし、昼寝でもするか……。




 スヤスヤ……

 グーグー……

 ガーガー……

 グアーッ! ガアーッ!

 なっ! なんだ? ……あああ、ビックリした。

 自分のいびきで飛び起きたニャン吉は、よだれを拭きました。


「ちょっと、知ってる? 益田さん、空き巣に入られたんだって」

 ん? 頭に手ぬぐいを被って、背中に竹かごを背負ったおばさんが、麦わら帽子にもんぺ姿のおばさんと立ち話中。

「聞いたわよ。タンス預金してたんだって」

「へそくりしてたのよ」

「うちもへそくりできる身分になりたいわ」

「うちだって、食べていくのが精一杯で、へそくりなんて、夢のまた夢よ。ハハハ……」

「それにしても、早く捕まってほしいわね。ま、うちは盗まれるものないから心配ないけど」

「うちもお金のほうは心配ないけど、ハートを盗まれる可能性があるから気をつけないと。おほほ……」

「あらぁ、お若い。女はいくつになっても気持ちだけは若くいたいわね」

「あら、まだまだお若いわよ」

「あら、そうかしら? オッホッホ」

(ったく、うるさいな。昼寝もできねぇ。場所変えるか)



 ニャン吉は、小さな神社の裏まで来ると、涼しい床下に入りました。昼寝の続きをしようとした、そのときです。

「――5、6、7、8、9、10万か。クッ、結構あったな、タンスに。さて、街に行ってうまいもんでも食うか」

 男の独り言を耳にしたニャン吉は、床下から顔を覗きました。

(こいつが盗んだのか)

 お金を手にした中年男が背を向けようとした寸前、ニャン吉はピューマのようにしなやかに走ると、男の手を目掛け、ジャンプしました。

 ガブッ

 一瞬のできごとに、何が起きたのか分からず、男はキョトンとしていました。



 川を越え、畑を越え、猛スピードで交番まで行くと、“ただいま、パトロール中”の札が下がった戸を開けて、泥棒から取り戻したお金を届けました。




(ったく、昼寝もろくすっぽできなかった。さて、晩飯は誰んちのにするか。吉田さんちはさっき西京焼きいただいたばっかだから、次は農業の藤田さんちにするか。どれ、それまで一寝入りっと)




「ちょっと! ちょっと! 私、見たのよ、空き巣の犯人」

(ん? さっきのおばさんたちじゃん)

「えっ! 誰だったの?」

「白黒のずんぐりむっくりの雑種」

(白黒のずんぐりむっくりの雑種? 俺のことじゃん。……まさか、西京焼き盗むとこ見られたのかな)





「札束くわえて、逃げてた」

(お、俺じゃないって、金盗んだのは。トホホ)