「……何?」

「この前の、お礼をしたくて……私、お菓子作りは得意なんです」

 色々とこんがらがってしまっていた事態を無事に解決できたのは、ルーンさんのおかげだった。

 もしかしたら、優しいシリルはジャスティナの真実を私を傷つけまいと黙っていた可能性だってある。

 けど、あの出来事で勇気を出した私は、いろんなことが解決できた。背中を押してくれた彼には感謝しかない。

「ごめん。明日王の命令で、ベアトリスに会わないといけないんだ。包んで置いといてくれたら、夜にでも取りに来るよ」

「あっ、わかりました。ごめんなさい」

「別に謝ることない。お礼はありがと。けど、まじで憂鬱。あいつ、本当に人の言うこと聞かないし」

 ルーンさんは顔をしかめて、嫌そうに言った。

 聖女ベアトリス様は女神が地上に降り立ったのかと思うくらいに美しい人だから、美人だからと好きな人ばかりではないという彼の主張は正しそう。

「けど、ルーンさんもベアトリス様に会って、大丈夫なんですか? 結婚迫られたりしません?」

「俺はベアトリスから、出会って早々に好みじゃないって言われてるから。心底助かるけど」