小さな酒場の軒先(のきさき)で手持ち看板を持っていた彼は、私を雨に濡れない屋根のあるところまで案内して、信じられないと言わんばかりに目を何回か瞬きをしてから言った。

「……え? あの……? もしかして、まさか……」

 頼りない灯りの下で見る彼は、金髪碧眼で完璧で整った容貌を持っている。服さえ高級なものへと替えてしまえば、実は王子様だと言っても通るかもしれない。

 あんなに主張がわかりやすい手持ち看板を持っていたのに、彼本人だって私みたいな女性が現れるなんて夢にも思っていなかったのかもしれない。

 意向をうかがうように無言でこちらを真剣にじっと見つめてくるので、私は急に恥ずかしくなった。

 嘘でしょう。こんなに美形の男性があんなことをするなんて、絶対におかしいのに。悪い男に騙(だま)されてしまうかもしれないのに。

 私はここから、自分で動くことが出来ないの。

「……あの……もしかして。困ってます? 私……」

「めっちゃくちゃ!! 困っています!! どうか、俺を人助けだと思って助けてください!!」