【書籍化】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。【コミカライズ】

 背も高くて均整(きんせい)の取れた体付きの彼がそこにいるというだけで、きっと目を留める人も多いはずだ。身にまとう服は、まるで冒険者のようだ。腰には長い剣。剣を使って戦う、剣士なのかもしれない。

 むしろ女性側から是非(ぜひ)にとお願いされそうなのに、なぜ彼はこんなところで結婚相手を募っているの?

 私はもしかしたら、彼が自分が思っているような人ではないのかもしれないとその時に気がついた。けれど、こうして近づいてしまったからには、回れ右して後戻りも出来なかった。

 彼は近づいて来た私のことを認識してから、とても驚いた顔をしたから。二人の視線が合って、彼は不思議そうな顔でぽかんとしていた。

「あのっ……」

「はいっ? え。何々! もしかして、貴族のお嬢様!? なんでこんなところに……どうぞどうぞ、こちらへ。雨に濡れますので」

 彼はこんな飲み屋街にはどう考えても不釣り合いな高価な生地を使った夜会用ドレスを見て、とても驚いたようだった。