【書籍化】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。【コミカライズ】

 幼馴染みで仲の良い彼女と、こんなにも話さなかったのは、人生で初めてだったかもしれない。

「ありがとう。ジャスティナ。私も不義理をしていて、ごめんなさい」

「良いのよ。貴女は新婚で、新しく転居もしたばかり。私も来てくれるかしらと思いつつ、招待していたのだけど、こうして会えて良かったわ……そう。私、フィオナにどうしても言わなければならないことがあって」

 いつも快活なジャスティナがこんな風に言葉をにごすなんて、とても珍しい。もしかしたら、とても言い難いことなのかもしれない。

「……? 何かしら」

「あの……エミリオ・ヴェルデのことよ。貴女、前に彼に好意があると言っていたことがあったでしょう?」

 私はそれを聞いて、エミリオ様とジャスティナの二人が、親密そうに談笑しているところを思い出してしまった。

 けれど、何故なのだろうか。そういうことがあったわと思うだけで、特に怒ったり辛かったりなんて、思わなかった。

「ええ? ……そうだったわね。そんな時もあったわ」

 彼女の言いづらい理由を察した私は、敢えて平然とした表情に見えるように装ったつもり。