「はは。ライリー。人里離れた山に篭りすぎて目が悪くなったのなら、良い医者を紹介してやろう」

「ルーンから聞いたけど、結婚式するまで白い結婚なんだろ? それならば、離婚するのにも、何の問題もない」

「……ルーン!」

 余計なことを言うなとシリルに睨まれたルーンさんは、両手を上げてさっき使った言葉を繰り返した。

「俺はどっちとも仲良いし、どっちの味方でもない」

 完全に戦闘態勢に入ってしまった二人は空へと舞い上がり、本気で戦うようだった。

 そして、目の前の光景に圧倒されていた私も、ようやく我に返った。

「……えっ……待って。嘘でしょう。こっ……ここは、王都のど真ん中なのに! 何考えてるの! ルーンさん、止めてください!」

 あの二人が本気になって人口密集地の王都で流れ矢のような攻撃が、誰かに当たったらどうするつもりなの。それに、建物だって……。

「うーん。俺も、あいつらは一人一人なら対処出来るけど……二人を同時に止めるのは、流石に無理だわ……良かったね。男前二人に取り合われて。初めて会った時には、かけらも見えなかった自己肯定感が上がって来たんじゃない?」