私だってしかるべき行為をしなければ、子どもが出来ないことは知っているのだ。

 拗ねた口調で言った私に、後ろに居たシリルは喉を鳴らしたようだった。

「そっ……そうだよね。うん。キスはしないんだけど……キスは確かに妊娠しないよ? その先の行為に、色々と問題がありまして……」

「それをしなければ、良いでしょう?」

 何を当たり前のことを言っているのだろうと私が後ろにある彼を見上げたら、シリルの顔は真っ赤だった。

 こういう何でもないようなことで彼の気持ちを実感出来るのは、幸せなことだ。

 力強い腕で横向きに抱え上げられて彼の顔が近づいて来たと思ったら、唇にあたたかなものが触れて、何回か触れてから呆気なく離れて行った。

「……俺だって、キスしたくない訳じゃないよ。フィオナ」

 ぎゅうっと私の体を抱きしめてそう言ったので、私はやっぱり彼の言いように不満だった。

「私はキスしたいわ。シリル」

「うん……ごめん。頭の中で理性の天使と欲望の悪魔が戦っているから、とりあえず話を変えよう」

「……どちらが、優勢なの?」