そう言いながら何気なく私の腰に手を掛けて来たので、シリルの大きな胸へと自然ともたれかかった。驚くほどに安心出来るその場所を知ってしまったら、もう手放せなくなってしまいそう。

 こうして結婚だってしていて、夫は私のことを好きだと確信していて、なぜか誰かに取られてしまわないかと不安になってしまうのだ。

 あまりにもシリルが、素敵な人だから。

「ねえ。シリル」

「……何? フィオナ」

 後ろから私の体を抱きしめていた彼は、いつの間にか洗い立ての私の髪の中に顔を埋めていたのか、くぐもった声で言った。

「なんで……キスも、してくれないの? 私たち、二回しかしてない」

 ぶふっと大きな息を頭に感じて、私は体の前にあった彼の大きな手を触った。

「おっ……俺だって、別にしたくないわけじゃないよ! まだ俺たち結婚式してないし、フィオナが妊娠したらいけないから、俺だって遠慮してたんだ……ドレスは、可愛いの着せてあげたいし」

「キスしても、妊娠しないわ。シリル」

 今まで理由あってご縁のなかった箱入りの令嬢だからと、何も知らないと思わないで欲しい。