「そんな訳で、シリルは頼むから聖女のベアトリスと結婚してくれと王様に泣きつかれて、困り果ててたんだ。俺が言ったんだよ。もしかして、シリルが既に誰かと結婚をしていたら、流石に向こうも離婚せよとは言わないんじゃないかってね」

 シリルさんの話を補足するようにして、ルーンさんは淡々と語り、私は先ほどの彼の奇行をなるほどと納得した。

「それで……酒場の前で、あんなことを?」

「そうそう。シリルはベアトリスに、結婚して欲しいってずっと迫られ続けてたんだけど、ずーっと断り続けてて……まあ、魔王討伐の旅の間は、こいつものらりくらりで我慢していたわけ。役割は明確に決まってるし、俺らだって聖魔力持ってるあいつ居ないと、回復出来なくて困るしさ。んで、魔王討伐の旅を終えて、シリルはベアトリスから一目散に逃げ出したんだよ……うん。まあ、本当に嫌だったんだな」

 他人事だと言わんばかりのルーンさんと私はシリルを見たんだけど、彼は無言で微妙な顔をしていた。多分だけど、紳士的な彼は自分に迫っていた女の子を迷惑だったとしても、彼女を悪く言いたくなかったのかもしれない。

「えっと……それと、今日看板を持って結婚相手を募っていたのは、どういう……?」

 結局のところ、私はシリルが何故あんなことをしていたのかという理由を知りたかった。事情を全て知ってから結婚するしないは、置いておいたとしても。

「あー……うん。どう探してもシリルが見つからないとベアトリスはキレて、この国の王様にあるお願いしたんだよな」