そのはずだった。私たちはお祝いのパレードで勇者ご一行をその目で見るのを楽しみにしていたんだけど、彼らはもう既に国を出てしまっているという説明があったのだ。

「あ。それは、嘘うそ。俺ら堅苦しいの嫌いだから、祝勝会みたいなのも全部パスしたくて、そういうことにしておきましょうっていう、建前のあれね。あと、一刻も早く、この国出たくて……はは」

「そうだな。魔王討伐成功報告だけ済ませて、俺らはすぐに城を出たから。そういうことになっていたって、あとで噂で聞いた。俺たちも」

 半年前に勇者様ご一行が魔王を倒し世界を救ったとの一報が入った時、私たちは歓喜の気持ちでそれを聞いたものだった。

 百年に一度周期の魔王復活があれば、魔物は活性化するし、魔王が世界を支配してしまえば私たち人間は滅ぶ。

 だから、救世主たる勇者御一行が居なければ、私たちは生きていなかった。そんな人たちを目の前にして、私はますます先ほどのシリルさんの行動が理解できなかった。

 勇者ご一行には、魔王を倒した報酬はたっぷりと支払われ、彼らは名誉も権力も一生使えきれないほどの金銭だって手にしているはずだ。