「自分でちゃんとできると言うところを見せたかったの。そしたら貴族じゃなくなってもやっていけると思って」

 平民になっても生活ができるように整えたかった。


「ほぅ。ルーナは家を捨てると言うことか?」


「捨てると言うか……私傷物だもの。伯爵家の名前にも傷をつけてしまって、」


「うむ。おかしな事を言うな。それなら今日もこんなに釣書が来るはずはないのだが」


 ばさっと机の上に置かれる釣書。


「これだけお前が注目をされていると言う事だ。半分くらいはノリで送ってきたものもいるだろうが、本気でお前と結婚したいと言うものもいる。しかしお前が望まない結婚をさせるつもりはこれっぽちもないから安心しろ。ルーナよ平民になってどうする? この身分があるからこそ出来る事もあるんだ。確かに自由は限られているが俺たちは恵まれている。だからこそやりたいことが出来るんだ。お前の事業がうまくいっていることは認めるが、伯爵家の名前があってからこそだ。もしおまえがそれでもどうしても平民になりたいと言うのなら俺は止めないが、店の権利は伯爵家のものだ。オーナーはお前かもしれんが元は伯爵家の金だ。今までの経費を差し引き、黒字の部分だけはくれてやっても良いが、商売とは水物だ。いつまで続くかわからんぞ。だからお前はまだ小娘だと言うんだ。小娘は甘えておけば良いんだ、優しい両親と兄がいるんだからな」

 そう言うと兄にデコピンされた。


「痛いっ……」


「傷物だと言うならしばらく大人しくしておけば良い。いじいじと悩むな。せっかく離縁できたんだからな!」


「お兄様が優しいと調子が狂っちゃう……」


 お兄様の優しさが身に染みてきた。私はまだまだ小娘なのね。