「……契約、以外にたまには一緒に出掛けないか?」

 しつこいわ。一緒に出かけるなんてストレスなんですけど……


「申し訳ございません。有難いことにとても忙しくしております」

「……せめて晩餐でも」

「私が本邸へ行きますとアグネス様が嫌がるでしょう? これは契約③にあたります」


 契約③アグネスを虐めてはならない。


 前回晩餐に誘われ、その時アグネスが暴れたと聞いた。私の存在そのものが契約③になるのよ。

「それならここでご馳走に、」

「侯爵様は本邸にいて下さらないと使用人が混乱します。パーティーの件は了承しましたのでどうぞ本邸にお戻りになってください」

「……また来るよ」



 来なくていいです。と言っても来るでしょうね。しつこい!


 書類仕事も疲れたしここに居るのもなんだか嫌で、気分転換に貴族街の店に顔を出すことにした。


******


「うん。今日も沢山のお客様が来ているわね! あら、お母様?」


「ルーナじゃない! お店の視察?」

「はい。気分転換も兼ねて……」


 母とバッタリ会った。母も視察? でも偶然って嬉しいわね。


「……そうなの? ねぇ今晩はパパも早く帰ってくるし、アルベーヌもいるからたまには家族で晩餐にしない? そのまま泊まっていけば良いわ。侯爵家にはこちらから連絡するわよ」


 言葉に甘えることにした。今日はなんとなく帰りたくない。

「それでは、後で伺いますね」


 一旦母と別れ、お店に入った。カフェスペースでお茶をしようと注文する。
 やっと一息つける……そう思った時に声を掛けられた。