執事とメイド長がこの離れは、歴代の侯爵夫人の癒しの場とされていた。と言っていた。建物も上品な作りでバラ園も素晴らしいし、ここは密かに気に入っている。


「ありがとう。侯爵家の庭園は広いからゆっくり時間のある時にするわね」

 正直離れの使用人は伯爵家からのメイド達だけで十分だけど、そうもいかないわよね。追い出すわけにもいかないし。味方が増えるかも知れないし?


「あ、そうだわ。この侯爵様からのプレゼントは頂けないわ。お断りしてもらえるかしら?」

 ばかみたいに高そうな首飾り。どこでこんな物を着けろというのかしら? 重くて肩が凝りそうだわ。


「畏まりました。そのように」


 そう言えば、あの晩餐から数日経っているけれど、侯爵様の姿が見えないわね。見なくても良いんだけどアグネス様と仲良くしているのかな? それなら喜ばしい事ね。仕事も始まっていることだし忙しくされるのは良いことよね。


 プレゼントなんて気を使わなくても良いのに。って気を使えない人だったわ。今までろくにプレゼントをされたこともないもの。ドレスを贈られたこともないから私の趣味では無いものを送りつけてくるのね。


 メイドが言うには侯爵邸には毎日商人が出入りしているとの事。私の予算は必要ないからアグネスに使って頂戴。と言うと執事長とメイド長からは断固反対されたわね。予算は決まっているのだから、私にかかる予算設定を変えないと使用人たちに迷惑がかかる。

 ましてや領民に迷惑が掛かることだけは反対させてもらうわよ。一年だけの戸籍上の妻だけどそこはしっかりさせて貰います。


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【ルーナの知らないところ】


「また勝手に商人を呼んだのか! 良い加減にしろ」