何かを手に入れる時は失うものがある。全て手に入れることは出来ない。私は欲張り過ぎた。遅かったけど。まだ間に合うはずだ!





「アグネス、別れてくれ」





「! 何を言っているの! それ本気?!」

 アグネスは持っていたカタログをばさっと投げつけて私に駆け寄ってくる。


「本気だ。今まで悪かった。慰謝料もちゃんと支払う、」

 アグネスに胸ぐらを掴まれた。直視できない。

「親子揃ってなんなの? あんたの父親も慰謝料を払うから別れろって言って来たのよ! 私がこの歳になるまで散々弄んどいて! あんたが責任を取るからって……」

「悪かった……この通りだ」

 膝を突いて頭を下げた……


「慰謝料として五千万リル支払う。この金で家を買っても店をしても好きに使ってくれ。アグネスの時間を無駄にして悪かった」


「別れないわよ! 私は侯爵夫人になるの! この歳で結婚なんてもう出来ないの! あんたが私の人生を狂わせたのよ! あのガキに何か言われたの? タダじゃおかないわよ、あのガキ!」

「妻はガキなんかではない……逆に私がおじさんになってしまったようだ」


「はぁ! 遠回しに私の事ババァって言ってんの? 若いオンナの方が良いって言ってんの? 散々ガキには興味ないとか言っといて今更? あのガキとは白い結婚だとか吹いといてよく言うわ!」


 アグネスが叫んだ事により白い結婚である事が使用人にバレてしまった。みんなの顔が歪んでいる……最悪だ。