ルーナは花嫁修行の為家庭教師が付いている。マナーはもちろん、刺繍や編み物に至るまで花嫁修行の一環だった。

 ルーナは十六歳になるとジョゼフと結婚式を挙げる事が決まっていた。この家で娘として過ごせるのはあと一年。ただルーナの希望で経営学も学んでいる。そしてルーナには経営をしている店もある。ルーナの両親はルーナがやりたいという事に反対はしないが、赤字が出たらすぐ撤退! とその辺はシビアだ。

「早く大人になりたい」



 これがルーナの口癖。会う度ジョゼフに子供だとバカにされる事に傷ついているようだ。


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「ジョゼフ! 良い加減にしろ! お前、まだあの女と切れていないのか!」

 ここは侯爵家の一室だった。

「切れるだなんて彼女に失礼ですよ! 彼女はもう二十五歳です。いき遅れた理由は私ですからちゃんと責任を取るつもりです」

「……責任だと? おまえはバカな事を言うな! 慰謝料でもなんでも払って別れろ! それくらいの金なら出してやる!! ちょっと歳は食っているが婚家の世話もしてやるから別れろ!」


 もうすぐルーナとの結婚を控えている。婚約者に会わずに昔から付き合いのある女に入れ上げているジョゼフ。婚約者の家は伯爵家だが王家からの信頼も厚いベルモンド家。


「父上は私の結婚と共に爵位を譲って領地に戻られるのでしょう? すでに書類上では私が当主の様なものです。私には私の考えがありますので放っておいてください」

 結婚まであと半年か……そろそろ動く時が来たか。ルーナに手紙を書く事にした。


 

 私には愛する女性アグネスがいる。昔から情を交わしている間柄でアグネスと別れるつもりはない。
 ルーナとは家同士のつながりで結婚する事にするが、私から愛される事を望むな。私の愛情はアグネスにだけ向ける事になる。