「そうでしたか。大事なお客様ならこんな離れで話をしなくても本邸にお呼びすれば良かったものを。こちらでは大したもてなしもできないんじゃないか?」


 ……はぁ? なんなのこの人! 笑顔が引き攣るわ。私の表情筋頑張ってよ! 何が夫よ! 私は認めていませんからね。


「侯爵様、何か用事でもありましたか?」



「いや、散歩途中だよ。休日でも体を動かさないと鈍ってしまうからね。ルーナもどうかと誘いにきたんだ。それにお客様がいるのなら夫として挨拶をするのは当然だろう?」

 ちょっと! 当然のように中に入ってこないでよ! 


「これは?」

 机の請求書を見てジョゼフが私に聞いて来た。パシッとその書類を取り

「これはわたくしの事業に関する物ですわ。侯爵様には関係のない事です」

 知られたくないの! これは私の夢のお店なんだから!


「結構な金額が動くんだね。よし、これは私が払ってやろう」

 はぁ!? やめてよ! 


「失礼します侯爵様、こちらはルーナ様からのご依頼ですのでルーナ様に支払いを求めます。ショップの内装、その他をルーナ様が一から考え実現したルーナ様がオーナーのショップです。いくら夫と言えどもそれはルーナ様の意に反する事でございます」


「いや、それくらいは夫婦なんだから良いだろう? 妻の負担を減らそうとしているんだ。ルーナたまには甘えてほしい。まだ君は若いんだから、」


「……結構です! 事業のことに口を出してこないで下さい! 何も知らないくせにっ。そんな事望んでいませんわっ」