面倒くさい。目を合わさずに答えた。

「……どうぞ」

「ここではなんだし、サロンでどうかな?」

「……分かりました」

 すっと腕を出されたが、ジョゼフに触れるつもりはない。家なんだからエスコートなんて必要はないもの。見えないことにして無視した。

 今さら変に優しくしないで欲しいわ。

 それが紳士ですって? 紳士ならあんな事言わないはずよね。愛人の住む家に(言いたくないけど)妻……を平気で呼ぶ男。

 自分勝手な人なの。
 デリカシーがないの。


 サロンに着くとメイドがお茶を出して、人払いをされた。

 ってなんなのよ!



「親戚の家からパーティーの招待状が届いた。出席してほしい」

「契約⑥に違反しますのでお断りいたします」
 
 貼り付けた笑顔でお断りした。

「それは分かっている。勝手なことだとも承知している。叔母さんの家で結婚式の時もたくさんお祝いを貰ったから、これはルーナにも出席して欲しいんだ。子供の頃から世話になっていて……頼む」

 がばっと頭を下げられた。


「……考えておきます」

 考えるだけ、答えはNOです。


「そのことなんだが、お互いの親戚筋の断れないパーティーは出席しよう。契約の見直しをお願いしたい」


「それも含めて考えておきますわ。ところで侯爵様は今までこう言ったパーティーはどなたをエスコートしていましたの? わたくしが子供だからパーティーも行けないと口にされたことがありましたわね」