「奥様はどちらに? お見かけしませんが……」


「離れに引っ越してしまったんだ。だから困っている」

「……白い結婚後は離縁するかどうかって……離縁を申請されたら奥様との結婚は無効となります。奥様がこの本邸を出られたと言う事はそう言う意志があるからです!」


「……嘘だろ。私は判を押さないぞ。一年後に新たに再契約だ! いや! 契約などしない。ルーナだけを愛する」


「この手紙は何ですか……愛される事を望むなとか。女性をバカにしています! 奥様に訴えられたら確実に負けますよ! それに世の中の女性達から総スカンです」


「だから謝りたいと言っているんだ。私が悪かったと……」

「とにかく一年の間に奥様の気持ちを侯爵様に向ける事です……それが出来なければ無理ですからね」

 疲れた様子の顧問弁護士を労わる様にして送り出す執事……


「旦那様晩餐の用意が出来ました。お客様をお迎えください」

「あぁ、いま、行く」


 アグネスを迎えに行くと、どぎつい化粧をして香水臭かった。明るいところでその姿を見ると気持ちが冷めてしまう。ルーナの様に清潔で化粧をしなくても若々しく、瑞々しい肌とは違うと思ってしまった……


「ジェフ、明日商人を呼んでくれる? ドレスが足りないのよね」

「……分かった。呼んでおくよ」


 結婚休暇で十日の休みを申請した。アグネスと過ごす予定だったが急に気持ちが冷めた……

 この十日間は毎日ルーナに謝りに行こう……

 夜になるとアグネスは私の部屋に来て、奉仕してくれたのだが気持ちと共に萎えてしまった……