「彼女は私に興味がないようで、さりげなくアピールしていたんだが全く気にも留めないような子で鈍感と言うか、恋愛に興味がなさそうだったから、彼女に合わせてのんびりしていたら急に婚約者ができたんだ」

「まぁ。それはお辛かったでしょう」


「まだ、分かってないようだ……それともはぐらかされているのか……」

「何か?」

「いや。それでどうやって慰めてくれる? このままデートでも、」

 ルーナの手を取ろうとした時だった。

「殿下、私の婚約者に何か用ですか?」

 さっとルーナの前に現れるエミリオ。


「……チッ、いたのか」

 にこりとルーナに微笑むエミリオ。

「お待たせしました。店が混んでいて遅くなってしまいました。あちらの木陰で休憩にしましょう」

「エミリオ様。ありがとうございます」


「もう少しだけ待っていてください。殿下に話があります。すぐに戻りますから」


 そう言ってスージーの分も飲み物を買ってきてくれる優しいエミリオ。私の侍女にも気を遣ってくれてスージーは公爵家で色々と学んでいるようだった。そしてメイド達とも仲良くしている。

******


「殿下、ルーナは私の妻になります。よからぬ気持ちはいい加減に捨ててくださると助かるのですが」

 笑顔のエミリオだが目は笑っていない。


「二学年の時、舞踏会に彼女を誘っていい感じになる予定だったのに卿が邪魔するからこうなったんだろ! そこから計画が崩れた!」


「邪魔をしているのは殿下です。いつもいつも彼女に付き纏って。いい加減にしないと抗議させて貰いますよ」


 学園に在学中は何かにつけてルーナに付き纏っていた。お茶に誘ったり勉強会と称して王宮に呼んだり、あろうことか最終学年の舞踏会のパートナーに誘ったり……ルーナにそれとなく殿下の事を聞いてみると、揶揄われているのです。と返事が返ってきた。