そう言うと、二人でくすくすと笑った。

「さすが本妻の凄みですわねぇ」

「もう過去のことです。わたくしはこの国でエミリオ様と幸せになります。アグネス、貴女もどうかお元気で」

 握手をするルーナとアグネス。

「えぇ。私も唯一が見つかれば良いけれど、少ーしだけジョゼフのせいで無駄に歳をくっちゃったわ」

「今のアグネスの方がずっと素敵ですよ」

「そう? ありがとう。ルーナ様にそう言って貰えると自信がつくわ」

「あら? 本心ですのよ」


「でしょうね。貴女も今の方がずっと年相応で可愛らしいですわよ……契約書なんていらなそうね。それじゃ私はこれで。お幸せに」


 手を振りカツカツとヒールの音を鳴らして去っていくアグネスを見送った。






「エミリオ様、昨日はごめんなさい。まさかこんな結末だったなんて」

 抱かれている手を解いて頭を下げた。

「いえ、私の方こそ誤解とはいえ貴女を泣かせてしまって申し訳ありませんでした。私も脇が甘いようですね」


「アグネスの罠にまんまと嵌ってしまいましたね」


「結婚式の前に貴女がいなくなると思ったら怖くて昨日は眠れませんでした。私が愛してやまないのはルーだけです」

 そう言うと手をぎゅっと握られた。

「はい。わたくしもエミリオ様のことを愛しています。貴方の愛を一瞬でも疑ってしまって申し訳ありませんでした」


 チュッ。と背伸びをしてエミリオの頬にキスをした。


「許して貰えますか?」

 エミリオが困った顔でルーナに言う。大型犬を慰めている気分になった。



「それはこちらのセリフです。私こそ昨日は冷たい態度を取ってしまって、」

「はい。とても辛かったです。ルーのあのような姿を初めて見ました……いつもは甘くて柔らかいルーがまるで塩の塊のようで……」

 しゅんとするエミリオ。