執務机にはたくさんの書類……

「あぁ。あれか? 見てもいいぞ」

 遠慮なく机に近寄る。

 新しくパティシエを雇う為に履歴書のようなものが置いてあった。

「ルーナの店なんだが……」

 ごくり。唾を飲んだ。明日見に行きたいと思っていた所だ。人が辞めたとか?! 何? その間は……


「私は未知の世界に足を踏み入れた……菓子など全く興味がなかったのだが、経営するにあたり全ての菓子を口にした。すると気になっていたことがあって、それを実行に移した。そうすると菓子に対するこだわりが出てきてしまってな……パティシエと毎日話し合いをした。何の話かと言うと、男の私が食べると甘いんだ。だから同じチョコでもビターにすることによりほろ苦い味わいが癖になるチョコレートケーキが完成した。パイも周りの砂糖を無くし、チーズやブラックペッパーを入れることにより酒のつまみにもなる。菓子は女性だけのものではない! と新たに販売を開始した所非常に受けてな……パティシエが足りなくなった。連日カフェは予約でいっぱいでさらに人数制限を設けるほどだ」


 帳簿を広げられた。

「……すごいわ。お兄様」

「まぁ、そうだな。新たに新作も準備しているし、季節ごとにイベントというか……賑わいを演出することにも成功している」

 凄い。この数字は……私には無理だわ。着眼点が違うだけで売り上げがこんなに? コンセプトは同じなのに

「ルーナの店のコンセプトがあってのものだし、ルーナが築き上げた土台があってのものだけど、楽しくさせてもらっている」


「そのことで話があるの」

 留学の延長をお願いしたいと言うこと、お店を引き続きお兄様にお願いしたい事を説明した。