～エミリオ視点～


　仕事をするにあたり小さい大きいは関係ないと習った。責任を持って最後までやることが大事なのだ。

　任せられるところは任せるのは必要だし、任された方も実力以上に実力を発揮してくれる事がありそれを見ると、こちらとしてもやり甲斐がある。

　ルーナ嬢の両親もそうだったのではないだろうか。ただ店をやらせて赤字経営をさせるほど仕事とは甘くない。
　ましてや貴族社会ともなると、評判も気になるし王太子妃が気に入りお忍びで買いに来るとまで言われている店の経営者だ。


　ここまで頑張るには苦労もあっただろう。伯爵の話を聞く限りうまくいかないと分かっていて結婚までしたような女性だ。芯の強さが見て取れた。


「規模はともかく最後までやり切ることが大事だと思う。それに私にはあんな美味しい菓子を作れないし、あの菓子を食べると元気が出る。それを考案しているルーナ嬢は凄いと思わないか？」


　さっぱり分からないという顔のルーナ。

「君が凄いと尊敬してくれる男のストレスを軽減させてくれているんだよ……ストレスで胃が痛くて食事も喉が通らないのに君の店の菓子を求めに行くんだよ。情けないかな？」

　ふるふると頭を振る。


「商品には自信がありますから。お客様のお力になれたのならとても嬉しく思います」

　はははっ……笑いが止まらない。

「些細なことが、大きな事に結びつくんじゃない？　王太子妃がおいしいと言って評判を呼んで店まで構えたんだろう？　凄い事じゃないか」

　落ち込んでみたり自信があると言ったりルーナは面白い。十六歳で経営をするだけのことはある。貴族なのに平民と同じ目線に立って働くところも好感が持てる。

「そうですね。周りに協力を頼みましたけどお店を持てる事により自信につながりました」