「これは恥ずかしながら私たちが知るところではありませんでした。娘と結婚相手は歳の差がありまして相手はずっと娘の事を子供だと言いバカにしていたようで……その、愛人がいまして、結婚式の次の日に愛人が一緒に住むことになったそうです。その愛人を愛しているから娘を愛する事はない、愛を望むなと……一年して子供が出来なければ第二夫人を作れる制度がありますので、一年は白い結婚をしてその後は、第二夫人を迎えるか、離縁するか娘に委ねる。と言った契約があったようです。しかし娘が美しく成長した姿を見て態度が変わり、契約の見直しをしたいと娘に何度も迫っていたようです。それを知り早々に離縁をさせました。契約書があったのですぐでした」

 なるほど。惜しくなったのか……バカな男だ。


「……貴族間にはいろんな契約の元、結婚をしている家はたくさんありますが……それは不憫でなりません。まだ若いのにそんなに辛い環境下にあったとは」

 あの笑顔の下にはこんな辛い事があったのか……その笑顔を見て可愛いと思った自分を恥じた。


「私たちが用意した持参金一億リルを一年の間に用意して私たちにそれを返し離縁する予定だったのだそうです。結婚前から離縁前提で計画をしていたと聞き、申し訳ない気持ちでした。ですから娘には今度こそ幸せになってほしい……バカな親はそんなことしか願えません」


 手をギュッと握り締めている様子を見ると本当に後悔しているのだろうと思った。