お兄様の言う通りだわ。自分の常識(マナー)が人と同じだと思ったら大間違いなのよね。反省しかないし、こんなこと身をもって体験するなんて……私はバカだわ。


「せっかく離縁が成立したのにまたあの家に出戻る事になったかもしれないんだからな! そんな事誰も望んでいない。またジョゼフ殿と顔を合わす事になっていただろうな。ふむ。侯爵家にはかなりきつめに抗議するようにと父には進言しておこう」


 お兄様が悪い顔をしていた。


「いつも迷惑ばかりかけてごめんなさい」


「まだ泣いているのか……分かればそれで良い。それに妹が兄に迷惑などと考えなくても良い。今回の件は相手が悪い。あの家はうちに一生頭が上がらなくなるだけだ。邸が見えてきたぞ、くよくよ考えずに今日は湯船に浸かってからすぐ寝ろ。これは命令だ」



 厳しくも優しいお兄様。一度家を出てみてお兄様の優しさに気づけたみたいで私はずっと誤解していたようだわ。