海の一族がもてなす料理といえば。
 魚介類だとばかり思っていた。
 実際、目の前には沢山の魚や貝類が調理されて並んでいる。
 しかし、これらの魚介類は客人の前だけで。
 カハナや村人たちが食べているのは肉だ。
「生まれてから、ずーと魚ばかり食べてるからな。海の一族にとって一番の御馳走は肉だ」
 と、初めてカハナに会ったとき。
 カハナが嬉しそうに牛肉にかじりついていたのを見たのは衝撃的だった。

 海の一族は、今夜のような宴会があるときは迷いもなく肉を町から買ってきて食べるのだという。
 集会所は、村人全員が入るわけにもいかないので。
 お偉いさんであろう人達が入ったり出て行ったりを繰り返している。
 海の一族は完全なる男性社会。
 全員、男。
 60代を越えるおじいさんばかりだ。
 そんなお偉いさんたちは、ジェイを見てぺこぺこ、12歳のカハナを見てぺこぺこしているから不思議で仕方ない。

 まるで、ジェイとカハナの結婚披露宴みたいだなあ…とぼんやり思った。
 海の一族が好んで飲むという蒸留酒をぐびぐびと飲み干す。
 そういえば、鈴様もホムラさんも、私もジェイも白雪姫をお酒は強い方だ。

 村の人達は国家騎士団である私たちにまだ嫌な顔をしているのかと思いきや。
 カハナ様の命の恩人がやって来たと言って、急に態度をコロリと変えてきた。
 笑顔で親切にしてくれるから、調子は狂うし。
 やっぱり、カハナは海の一族にとって凄い存在だというのがわかる。

 沢山、食べて、飲んで。
 宴会がお開きになる頃。
 事件は起きた。