何故、こんなに走っているのか鈴自身はわかっていない。
 それでも、初めてドラモンド侯爵が間違いを犯していることに気づいた。
 ホムラを止めなければならない。

 俊足である鈴は風のように走り抜ける。
 広大な敷地内からホムラを探し出すのは骨の折れる作業かもしれないが。
 ある程度の目星はついている。
 人気のない…誰も近寄らない。
 立ち入り禁止区域にでも相手を拘束しておけばいい話だ。

 ホムラは拳銃を使用するだろう。
 ならば、音が響いても大丈夫な場所といえば…

 心臓をバクバクさせながら、全速力で駆け抜けていると。
 目的地のほうから、パアーン・・・という銃声音が聞こえた。



「ホムラ、やめろー」