「いや、別になんでもない。行くぞ、送ってやるからついてこい」

「あっはい!」



言葉はきつく聞こえるけど、成瀬くんめっちゃ優しいじゃん。

今更だけど普通にしゃべってくれてる。



「お前さ、方向音痴なら寮住めばよかったじゃん。敷地内だから基本迷子にならないだろ」

「えっと、それはー……」



最初はそれも考えはしたんだけど、大反対されちゃったし……。

ウィッグとかずっとつけてないといけないのはちょっときつい。結構蒸れるんだよね、これ。

本音を言うなら今すぐ外したいもん。



「まぁ色々あるよな。俺も寮住みたくねーから一人暮らししてるし」

「そうなんだ」



わたしと一緒だ。

高校生で一人暮らししてる人、そんなにいないからちょっと親近感。

そのまま話しながら歩いていると。見覚えのあるマンションが見えてきた。



「あそこです!」

「そ。ちゃんと帰れてよかったな」

「ありがとうございました!」



お礼を言い、マンションにひとりで向かおうとすると、なぜかついてくる成瀬くん。