天使くん、その羽は使えません (短)

「これからもよろしくね、天翔くん!」

「っ……」


ギュッ

晴衣に差し出された手を、少しずつ、力を込めて握っていく。その時。俺の心には、温かい風が吹いていた。


「気持ちよく飛べそうな、いい風だ」

「やっぱり羽が恋しい?」

「――ううん」


もう俺の背中に羽はない。だけど、晴衣と一緒にいると、いつもどこかを飛び回ってるような……そんな心地いい気分になるんだ。


「人間は、こんな風に飛ぶんだね」

「飛行機のこと?」

「……ふふ、違うよ」


その後――


神様が記憶を操作してくれたらしく、晴衣が事故にあった事は、皆の記憶から消えていた。

だから俺と晴衣は、いつものように晴衣の家へ帰った。

のだけど……