天使くん、その羽は使えません (短)

「……っ」


さっきまで心臓が止まっていたのに、俺が微笑んだだけで、晴衣はこんなに無邪気に笑ってる。


「晴衣は、変だよ」


そう言うと晴衣が「お兄さんも変人だよね」と、更に笑った。


「二人の話してる声が、少しだけ聞こえたの。天翔くんの事が大事なら、素直にそう言えばいいのに。お兄さん、優しいけど偏屈だよ」

「……うん、本当だね」


ギュッと晴衣の手を握る。温かくて、力強い脈。ちゃんと生きてるよって、晴衣の全身が俺に訴えている。


「良かった。本当に……」

「天使じゃなくなったのに?綺麗な羽も……無くなっちゃったね」

「うん。それでも、良かったんだよ」


そう答えると、なぜか晴衣が悲しそうに眉を下げた。