「あーぁ。天翔くんに良い報告が出来ないなぁ」


シャー

ふくれっ面をしながら、夕暮れに染ったオレンジの街中を、自転車で走る。


(あんなに自主練に付き合ってくれたのに負けるなんて、天翔くんに申し訳ないな。帰ったら、たくさん謝って、たくさんお礼を言おう)


ここまで考えた時。「あ」と我に返る。なぜなら、天翔くんが言った言葉を思い出したからだ。


(そういえば私。この帰り道に事故にあって――死ぬんだった)


思い出した瞬間。

私の真横から、いきなり大型トラックが現れた。それは全く予想できなかった事で、ブレーキも何もかも、間に合うはずがない。


ドン


鈍く重たい音がして、大型トラックに跳ねられた私。その体は、空へと高く上がっていく。


(まるで、飛んでるみたい――)


そう思ったのを最後に。

私の意識も、そして命も。

その灯りを、ゆっくりと消していった。