殿下は殿下の心のままになさってください。

(こんなわたしを好きになってくれる人がいるなんて……)


 にわかには信じがたい――――けれど、嘘とも思えない。


 ヴァージル殿下はわたしの手を握ると、触れるだけのキスをする。ゴクリとつばを飲みながら、わたしは視線をうろつかせた。


「今はまだ恋にならなくても良い。いつかきっと、君を本気にさせるから」

「で、でも……」

「殿下は殿下の心のままに、だろう?」


 いつぞやのわたしのセリフを口にして、殿下はニコリといたずらっぽく笑う。


「……そうですね」


 恋愛のことは未だによく分からない。
 だけど、殿下のことはほんの少し分かった気がするし、これから先も知っていきたい――――そんなことを密かに思う。


 わたしたちは顔を見合わせつつ、声を上げて笑うのだった。