それには……。私は馬車の中で必死になってひたすらゲームの内容を思い出し、活路をどうすれば見いだせるか考えた。

 馬車を降りて王宮へ入った。

 普通なら婚約者である王太子様にエスコートされて先に入っているはず。今一人でいること自体、変だと思わなかったとしたらやっぱりリリアーナってちょっと馬鹿かもしれないなんて思った。

 でも、私はリリアーナの姿をした東里香。
 リリアーナほど馬鹿じゃないから、考えた。

 ずんずんと歩いて、一人で舞踏会会場へ入る。

 皆が驚いてこちらを見てる。
 すでに音楽が鳴っている。

 見ると広間の高台に王様と王妃様、その隣に王太子様が座っている。王太子様がこちらをチラリと見たが、すぐに眼をそらした。
 王様と王妃様はそんな息子の様子を見て、ため息をついた。

 そしてワルツの音楽が流れはじめたら、王様が王妃様をエスコートして中央へ出てきた。
 お二人が踊り出した。皆、一曲目はお二人が踊っているのを見ている。二曲目から他のカップルも一緒に踊り出した。
 
 王太子様は立ち上がり、私ではない、そうメラニーのところへ向かって行った。
 そして彼女の手を取ると、手の甲に口づけし、広間へ誘った。ふたりは踊り始めた。

 皆がざわざわし出した。当たり前だ。

 本来なら婚約者である私リリアーナと踊るはずだったのに。大勢の目の前ですごい侮辱。
 残念ながら、私はショックというより、結構冷静にその場にいた。だって、ゲームで見たことのある光景。つまり、この後みんなの前で婚約破棄されるって訳ね。

 曲が終わった。

 王太子様はメラニーと手を繋いだまま、私の方へ歩いてきた。

 皆、私の周りから下がっていく。
 音楽は流れているのだが、だれも踊らない。

 衆目が集まった。

 王太子様が目の前で立ち止まった。