「わああ、ケビン！どうしよう、怖いよ……」

「リリー。馬は人の気持ちを読む。お前の不安がロンに移る。落ち着け」

　今日は三回目の乗馬レッスン。ここへ来る度、小さいケビンの息子でさえ馬に乗れるのがうらやましかった。馬の乗り方を教えて欲しいとお願いして、ようやく練習が始まった。

　前回は、馬の特徴を教えてもらった。二回目は少しだけケビンが手綱を引いて歩いてくれて、楽しかった。

　今日はとうとう自分で乗るところまで練習を始めた。セシルに内緒で練習して、出来るようになったら驚かせたいと思っていたので、彼がいないうちに来たのだ。

　すると、馬場の近くに急にセシルが現れた。驚いた馬は急に走り出した。

「きゃあー！」

　セシルが何事かとこちらへ来て、呪文を唱えようとしたのをケビンが制した。

「やめろ！余計に刺激する。俺に任せろ」

　ケビンは自分も馬に飛び乗ると私の馬を追いかけて自分の馬に鞭を入れた。

　徐々に追いついてきた。すると彼は縄を回して、私の乗っていた馬の首に巻き付けた。馬は止まった。私は振動で振り落とされた。

「痛っ！」

　セシルが私の側に来て、助け起こしてくれた。

「おい、リリー！大丈夫か！」

「あ、うん。セシルったらびっくりさせないでよ、急に現れたらダメだよ」

「悪い……まさか目の前に馬がいるとは思わなかった。馬を驚かせたんだな」

「全く……魔法使いは突然だからな。周りにいるものをよく見てから魔法を使えよ。動物は理解できないものに怯える」

　ケビンが二頭の馬を引きながら横に来た。

「リリー、大丈夫か？落ち方を教えておいて良かったな。まあ、あれなら怪我はないだろ？」

「うん。でもお尻が痛いよ」