今日は私とアツシとの記念すべき最初のデートだったはずなのに!どうしてこうなる?またもや卒倒しそうになった。

 ハアハア。深呼吸。

 待てよ。ということは、もしかして、私って死んだの?いや、どういうこと?手術失敗したの?そんなはずない!死んだという実感がないのに転生する?

 「お嬢様。お時間ですけど……」

 気付いたら、何もしてなかった。急いで、壁にかかっているドレスを着る。うまくできない。何これ?どうなってんの?

 「あ、あの。ごめんなさい、手伝って」

 扉を開けて、侍女に頼む。
 ため息をつかれてしまう。

 「はいはい。お嬢様、とにかく急いで準備しましょう」

 そう言って、手際よく着替えさせると髪を結ってくれた。
 あら、思ったより美人に見える。あのゲームでの感じはいつもいかにも悪役って感じの印象だったけど、こうやって見ると普通の美人なのね。可哀想に。物語には悪役とヒロイン、モブはつきもの。

 なんて人ごとのように言っている場合じゃなかった。
 とにかく、死んでないなら元の世界に戻らないと。
 もしかして、リリアーナが今向こうへ行っているんじゃないでしょうね?アツシが見舞いに来てたら絶対フラれてしまいそう。悪役令嬢だから口悪いし。まずい、早く戻らないと。

 ブツブツ言う私を変なものを見るような目つきで侍女が見てる。

 「はい、準備できました。いかがですか?」

 鏡を見ると、立派な貴族令嬢のできあがり。

 「あ、いいんじゃない。ありがとう」

 「……リリアーナ様。いつもならあそこが嫌とかあれに変えてとかうるさく言うのに、なんか、お礼なんておっしゃって。私、嬉しい……」

 侍女がよよよと泣いている。
 全く、どれだけ意地悪だったのよ。とにかく、ここをなんとしても出て、元の世界へ戻らねば。