すごい音がして、俺は一階で振り向いた。これは、地下?
 リアムが言う。

 「地下の魔法具の部屋にリリアーナを隠して来たんです。もしかして、王太子とばったり会ったりしてませんよね?」

 心配そうに、こちらを見ながら話す。

 俺はその言葉を聞くと、すぐに下へ駆け下りた。
 部屋のドアを開けると王太子様が振り向いた。尻餅をついている。

 周りは棚の上にあった壺が落ちてきたのだろう。破片が散らばっている。

 「王太子様、お怪我はありませんか?手が切れてます。大丈夫ですか?」

 俺は王太子を助け起こし、身体の周りを確認した。

 「いや、かすり傷だ。それより、すまん、暗くて見えなかったんだ」

 「壺の中身は被ってませんよね?」

 「……いやそれが……」

 王太子様が言いよどんだ。

 「俺を誰かが突き飛ばして壺が当たらないようにしてくれたんだ。そして、その突き飛ばした人が粉を被って、そして……」

 俺は、嫌な予感がして王太子様の言葉を繋いだ。

 「まさか……消えましたか?」

 「……やはり。消えたんだな。最初は姿が少し見えていたんだが、だんだん見えなくなったんだ」

 「……大変だ……」

 俺はきびすを返したが、王太子に腕を取られた。

 「おい、あれは誰だ?弟子なのか?」

 「わからなかったんですか?」