私は急いで、指を切って、石に血を垂らした。
 
 すると、石が白色だったのに、血を垂らしたところから黒く変わった。

 早く来て、セシル……。
 
 彼の顔が思い浮かんだ。最近は私に笑いかけてくれたりして、優しくしてくれた。
 
 さっきも私のこと、ずっと側に置くと言ってくれていた。嬉しかった。

 現代に帰ることを忘れていることがあるくらい、彼との生活は楽しいのだ。

 そんなときだった。
 後ろから何か気配がする。
 全身の毛が逆立つってこういう感覚?

 私はつんのめって、後ろをそっと見ると大きな口を開けたクマよりも大きな動物がこちらをじっと見ている。

 本当に怖いときって、声も出ないとわかった。
 足も金縛りにあったかのように動けない。
 震えるしか出来なかった。

 その動物が近寄って来た瞬間。私は怖くて眼をつむった。