ようやくって。セシルったらひどいわ。ご飯だって作ってるし、掃除洗濯、薬草やキノコ採りまでしてるっていうのに。

 「そういうわけですので、彼女はもうこちらでずっと雇いますので、俺の側に置いておきます。よろしくお願いします」

 クビにならなくて良かった。

 「……お前。あの娘が気に入ったのか?」

 「まあ、そうですね。口は達者ですが、とりあえず知識もありますし、ここで使うには重宝します。食事も作らせることができますので……」

 「まあ、確かにここには女手がないからな。不便は不便だな。あいつも修道院へ行かずにすんで、さぞ喜んでいるんだろう。口が達者過ぎて、ああいうところにいったら叱られるだろうしな」

 「……王太子様、それでどんな魔法具をお求めですか」

 「ふむ。最近隣国のほうへ我が国の情報が漏れているようだと王様から話があった。それを遮るにはどうしたらよいか、役に立つ魔法具がないかとの仰せだ」

 「それでしたら、こちらにあります」

 そう言って、魔法具の部屋へ入ってきた。
 まずい、見つからないようにしないと。

 「この石をスパイと思われるものに持たせれば、その者を追跡し、大体どの辺にいるのか水晶で後から見ることができます。スパイか確認出来るというわけです」

 「行動や会話を知ることは出来ないのか」

 「できません。しかもあまり遠い所ですと反応しません。水晶で見られなくなったということは、他国へ出たということだと判断できます」

 「なるほどな……よし、それをいくつかもらって行こう」

 「今、これを入れる袋を持ってきます。日の光にあてると劣化しますので。王太子様、ここでむやみにものに触ったり、歩いたりしないでください。すぐに戻りますので……」

 セシルが袋を取りに行っている間に、王太子が棚のものを物色し始めた。