「ねえ、ここってもしかしてセレンティ王国?」

 侍女は怖いものを見たかのような眼をして、彼女を見た。

 「そうに決まってます。え?本当に大丈夫ですか、お嬢様」

 「ちょ、ちょっと待ってちょうだい。ということは、私はリリアーナ・フォン・スツール?」

 「そうですけど……本当に、お医者様呼びましょうか?」

 「だ、大丈夫。ちょっと休ませて。すぐに準備したら呼ぶから……」

 不思議なものを見るようにして、うなずいた侍女は頭を振りながら出て行った。

 リリアーナ。そしてオスカー王太子。聞いたことある。見たことあると思ったこの顔。

 あれじゃん!
 セレンティ王国のゲーム。これって、パートⅠだよね。
 だって、パートⅡではすでにリリアーナは婚約破棄されて、庶民になって、修道院行きだった。

 オスカー王太子はメラニーと結婚してパートⅡで他国との戦争があって、確か、魔道戦争になるんだよね。

 うん。思い出した。
 って、そんなことで安心している場合じゃなかった。

 私、リリアーナって呼ばれてたよね。
 両手で頬を囲んで鏡を見る。

 ひえー。どう見ても、あのゲームの悪役令嬢リリアーナその人に見えますが……。
 私はムンクの叫びを地で行くような顔になり、卒倒しそうになった。

 だって、これから初めての舞踏会って言ったよね。
 ということは、私あそこで婚約破棄されて侮辱されて、罪状を突きつけられる。

 そして、拘束されたうえ、修道院へ行くのだ。

 嘘でしょ!