「大体、その時空を超越っていう意味さえわからん。場所を移動するのが転移。知らないところへ転移はさせられない。飛ばす場所もイメージした上で、飛ばす人数も限られるし、飛ばす距離も限られる」

 「……つまり、セシルが知りもしないところへは飛ばせないということなの?」

 「まあ、平たく言えばそうだな」

 「……えー!それは困るよ」

 セシルは立ち上がって、睨み付けた。

 「何言ってんだ、お前こそ変だ。困るのはこっちだ。王太子の前では手伝うとか大口たたいておきながら、何だ、その言い草は」

 「……だって、それはしょうがないよね、ここへ来ないと始まらないと思ったんだもの」

 ふたりで盛大にため息をつく。

 「とりあえず、ここで預かると言ったからには預かるしかない。お前、明日から仕事手伝わせるからそのつもりでいろよ。薬草の知識があるっていったよな。本当だろうな」

 「うん。このアロエは現代にもあるよ。ヨモギでしょ、オオバコ、ドクダミ、あ、これはユキノシタ。利尿や解熱作用もあるよ」

 棚に置いてある乾燥した薬草を教える。セシルは驚いている。

 「……嘘ではなかったんだな。よし、採用してやる。その現代とやらに戻る方法については、魔法具などの本も調べてみるから少し待ってろ」

 「はーい、よろしくお願いします」

 右手を挙げて、返事をしたら私を見て苦笑いしてる。

 すみませんね。ご迷惑おかけしますが、どうぞよろしくお願いします。そのつもりでぺこりと頭を下げる。

 すると、扉をノックする音がした。

 「師匠、入りますよ」男の子の声がする。

 「ああ、入れ」セシルが返事をした。