それから私は、うまく学校生活を送っているつもりだった。

「最近お前、ヘラヘラしてるよな。」

数日経った学校のある日。
急に私は、クラスのいじめっ子たちに呼び出されて女子トイレに連れ込まれる。
今までは悪口や無視がメインだったため、こうした行動は初めてだった。

「なんか楽しいことでもあった?それともとうとうイカれた?」
「……」
「無視とかいい度胸してんじゃん。毎回毎回、黙ったままで何考えてるかわかんねぇのに急にヘラヘラして何も気にしてませんみたいな態度、イライラすんだよ……学校にもよく来れるよな?」

髪の毛を掴まれ、壁に頭を強く叩きつけられる。
鈍い音が鳴り、視界がぐらぐらと揺らぐ。
そのままへたり込むと同時に気持ち悪さが込み上げて、私はだらしなく床に吐瀉物をぶち撒けた。
彼女らの嫌がる声や笑い声が脳に響く。
立ち上がるにも力は入らないし、呼吸は浅く、焦点が合わない。
私はこんな状況下なのに不思議と「死ぬのかな」とは思うことなく、ただ茫然と汚れた床を眺めた。

「キモすぎるんだけど!吐くとかマジでない。気分悪いからさっさとそれ片付けろよ。」
「……」
「この気に及んで黙ったままとか、本当に感情ある?そもそもお前人間?……もういいや、行こう。」

数人のいじめっ子たちは侮蔑的な言葉を口にしながら女子トイレを出ていき、静寂が訪れる。
私は、吐いた拍子に汚れた制服や靴に目を落とし、ため息をついた。

「……やっぱり、上手く行くわけないよ。」

ポツリと呟いたその言葉にどこからか返事が返ってくることもなく、ただ虚空に消えていった。