寝り切った午前1時すぎ。
街は月明かりと街灯だけに照らされて、仄暗い。
外を出歩く人も殆どおらず、この世界には私しかいないのではないかと錯覚する。

『ねぇ、知ってる?鏡の中のリョキの都市伝説。』

なるべく人に見つからないように、路地に入り込み少しだけ遠回りをしながら私は目的地に向かう。

『どうやらさ、うちの学校でだけの都市伝説らしいんだけどね。深夜2時に第3校舎裏に行くと、日中は置いてないはずの全身鏡が現れてね、その鏡に向かってこう言うんだって。』

時間をかけて到着すると、学校の門にはしっかりと施錠がされており、普通に突破するのは難しそうだった。
だけど、私はこの前抜け道を見つけ、セキュリティ面でも引っ掛からずに通れそうな場所があることを知っている。

『「鏡の中に映る私、こちらの世界に来ませんか?」って3回唱えるとね、鏡に映る自分がひとりでに動き出して、現実世界の自分と入れ替わってしまうんだって!』

私は、少しだけ校門から離れた柵の近くに移動すると、不自然な位置にある葉を手で掻き分ける。
そこには、1人分が通れるほどの抜け道ができており、そこを潜り抜けるとあっという間に学校敷地内に入り込めた。

『でもね、この鏡に出会うにはもう1つ大事な条件があるらしいよ。』

防犯カメラの位置は全てチェックしたから、映り込まないように気をつけて歩き、校舎裏に到着する。

『それはねーーー



自殺志願者の前にしか現れないんだって。』