別れを決めたので、最後に愛をください～60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す～

　しかし彼に近づこうとすればするほど現実を知り、高くなっていくハードルを前に諦めたのだ。

　和輝がお見合いすると聞いたのがきっかけではあったが、遅かれ早かれ同じ結論になったはずだ。

　このままでは自分は和輝に身体で迫った上、責任を取らせる最低な女になってしまう。
　あんなに良くしてくれていた猪瀬家の人たちへの恩を仇で返すことになる。それだけは嫌だ。

　大好きな人たちに嫌われたくない。せめて親戚の子の立ち位置でいたいのだ。
　そして少し遠くから猪瀬家の幸せを願わせてほしい。

「和くんお願い。考え直して」

　正座したまま和輝を見上げて懇願する。こんなに必死になるのはいつぶりだろうか。

　しばらく未来を見ていた和輝は、本当に仕方なさそうな顔をして大きなため息をついた。

「わかった。俺も君の気持を考えずに強引に結婚するのは本意ではない」

「っ、じゃあ！」

「２か月やる」

　パっと顔を明るくしたのも一瞬、未来は和輝の予想外の言葉に息をのむ。

「え？」