別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

「そうだな、俺と結婚したら俺以外の“奥さん”にはならないはずだ」

「待って待って! 和くんおかしいよ、なんでそんなこと急に」

 スツールから落ちんばかりに動揺する未来の耳に静かな一言が響く。

「覚悟」

「え?」

「俺は昨日君に聞いたはずだ、俺のものになる覚悟はあるかと。

 未来は昨夜ホテルのベッドに組み敷かれながら、彼としたやりとりを思い出す。

――『俺のものになる覚悟があるならそのつもりで君を抱く』
――『覚悟なら、あるよ』

「覚悟があると君は言っただろう。だから俺は君の人生をもらい受ける覚悟をもって君を抱いた」

(俺のものになる覚悟って……そういうこと!?)

 未来はあの時、初めてを失う覚悟があるかと言われたと思っていた。

「今朝ホテルでこれからのことを話そうと思っていたのに、君は逃げた」

 グッと言葉に詰まるが、それを気にしている場合ではない。何とか声を絞り出す。

「う……和くん違うの。あれは一夜限りっていうか、私が経験上初めてをもらってほしかっただけで……そんな重くとらえなくてもよくて」

 ここで何とかしないと、まずい方向に行きそうな気がする。