別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

「いくら幼馴染とはいえ、なんというか、若い男女がひとつ屋根の下に暮らすっていうのは……」

 焦る未来に和輝は口の端を上げ笑みをつくる。

「若い男女がひとつ屋根の下、ね。だが、俺たちはもうすでに“そういうこと”をした仲だろう?」

「なっ……」

 “そういうこと”を強調するような言い方に、未来の顔に瞬間的に熱が集まる。

「……忘れてってメッセージ入れたよね」

「忘れられるわけないだろう」

「和くん?」

 彼の声が不自然なほど低く揺れた気がして思わず聞き返すが、一瞬のことだった。

 戸惑う未来に構わず「それに」と和輝が続けた言葉は信じられないものだった。

「そもそも、俺は君に結婚を申し込みにここに来た。結婚する俺たちが一緒に住むことに何ら問題はないし、むしろ自然だ」

「……はい?」

「未来、俺の妻なれ」

 和輝はなんでもないことのように言うと、真っすぐに未来の目を見る。

(つ、妻って、冗談? ううん、和くんはこんなことを冗談で言う人じゃない)

 だからこそ、戸惑いが焦りに変わる。

「あの……ごめん、それって、私が和くんと結婚して和くんの奥さんになるってことを言ってる?」