別れを決めたので、最後に愛をください～60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す～

「まあいい。未来、それなら即入居可能で、セキュリティ万全な物件がある」

　和輝サラリとした口調で言う。

「それってもしかして、猪瀬のお屋敷のこと？　さすがにもうご厄介になるつもりはないよ」

　和輝なら言いそうなことだと思う。
　なんせあそこには未来が使っていた部屋がそのまま残っている。でも一度ならず二度までも迷惑をかけるわけにはいかない。

　すると和輝の口から思いがけない言葉が返ってきた。

「違う。君が住むのは俺のマンションだ」

「ん？　オレノマンション？」

　どこ？　と首をかしげる未来に和輝は続ける。

「俺のマンションなら君がひとりふえるくらい問題のないくらいの広さがある。コンシェルジュも常駐しているし、セキュリティも問題ない。それに何より会社にも近い」

　そこまで言われてやっと理解した未来はにわかに慌てだす。

「ま、まさか、和くんのマンションに住むってこと？　気持ちはありがたいけど、さすがにダメだよ」

「なんの問題がある？」

「むしろ問題しかなくない？」

　和輝が気にしなくても、自分と周囲の人間は気にするのだ。というか、和輝も少しは気にしてほしい。