別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

 これはダメなパターンだ。昔から和輝は未来の隠し事に敏感だ。この顔をした彼をごまかせたためしがない。

 子供のころはもちろん、高校生の時、風邪気味なのを隠して学校に行こうとしていた未来に気付いた和輝この顔で詰め寄られ、体調が悪いことを白状させられた上、往診の医師まで呼ばれてしまったことがある。もちろん学校は休むことになった。

「う……わかった。話すから、とりあえず座って」

 未来は肩を落としながら和輝をソファーに促し、自分は斜め前に小さなスツールを置き座った。

「……というわけで、すぐ入居できる部屋を探そうとしているの」

 未来は実家に帰ろうとしていたが、父の再婚によって取りやめたこと、とはいえ行き先が決まっていないこと、ようはすべての事情を話した。

「でも、大丈夫だよ。明日不動産屋さんに行くつもりだから」

 きっと何とかなるよと明るく言う未来に和輝は溜息交じりに口を開いた。

「なぜ、すぐ俺に相談しなかった」

「お父さんに聞いたの昨日の朝だったし、急すぎて昨日は現実逃避したかったの」

 実は和輝に頼ることはおろか、この先ふたりで会うつもりもなかった、とは言えない。