別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

 その後は通常通り仕事を粛々と進めた。
 
 そろそろ昼休憩の時間帯、フロアの端の作業エリアで未来は都内の有名結婚式場から発注された什器類の見積もりのチェックを行っていた。

(これ、尾形君が取ってきた新規案件だ。なるほど、式場じゃなくてブライダルサロンの方の備品を改修を機に全部入れ替えるのね。おお、なかなかいいセンスだ)

 品番を見ただけで商品が思い浮かぶほど頭の中に自社のカタログは叩き込まれている。
 INOSEの製品の中でも比較的価格帯の高いラインナップから、モダンなデザインの椅子やテーブルが選ばれていることがわかる。
 何となく気になってその式場のホームページを開いてみるとトップページに光が差し込む式場の祭壇の前で、ウェディングドレスとタキシードで向き合い笑い合う一組のモデルの画像が掲載されていた。

 それは幸せの象徴のように明るいイメージで、思わす見入ってしまう。

(結婚式かぁ……きっと和くんの結婚式には呼ばれちゃうし、出ないわけにもいかないんだろうな)

 いくら彼への想いは手放すと決めたとはいえ、こんなふうにパートナーと笑い合う結婚式を目の当りにしたらさすがに辛いものがある。